ゾーイとウーゴの出会い(後編)

前編より続く)

つかず離れずで暮らすこと1ヶ月余り、ゾーイの本心が垣間見える出来事がありました。

ウーゴの去勢手術の日、朝一番でウーゴを獣医さんに連れて行きました。ママが一人で帰ってきたら、ゾーイが普段は乗らないソファーの上に乗ってきて、「ママに甘えるにはここにいればいいのね」とでも言うように、ママにくっついてきました。ゾーイと二人っきりの日はこの日限り。したいことをさせ、たくさん遊んで、思いっきり甘えさせてあげました。翌日、手術を無事に終えたウーゴを迎えに行き家に戻ると、ゾーイがまた気配にいち早く気づきました。キャリーケースから出てきたウーゴを見たゾーイの目は見たことがないほどつり上がり、「あんたまた帰ってきたの」というような顔をしました。

ああ、やっぱり、ゾーイは心の底では納得していないんだな、と、崖の下に突き落とされたような気分になりました。でもウーゴも大切な家族、欠かすことはできません。これから家族4人で楽しく暮らしていくために、折り合いをつける方法を探していこうと誓いました。

ここでママが決めたのは、

・猫のルールに任せる。

・二人が仲良くしているときはできるだけさりげなくして、大きく反応しない。

・平等だけれどゾーイを一番に扱うために、ごはんのお皿をウーゴのよりも一瞬でいいので先に置く。名前を呼ぶのも遊ぶのも、ちゅ~るをあげるのも、ゾーイを先にする。

でした。パパとママは、これまで通り、おもちゃやにおいの交換は積極的にしましたが、対面時には余り手出し口出しせず、見守りました。

ウーゴがみんなと寝室で寝るようになったのは、我が家に来てから1ヶ月ほどたった頃です。それまでゾーイは毎晩ママの顔の前で寝ていたのですが、ウーゴも一緒に寝室で寝るようになってからは、ベッドにも上がらなくなってきました。さみしかったけれど、我慢です。それがゾーイの決断なのですから。とにかくすべて受け止めました。

数日間、毎晩のようにウーゴがベッドに上がるやいなや、ゾーイがベッドから降りてしまい、ふいっと寝室の隅に行ってしまうということが続きました。それを何日か繰り返すうちに、ウーゴは何か自分が原因らしいと気づいたようで、急いでベッドから降り、戸惑った様子でウロウロしていました。心の底では、パパもママもみんなでベッドに寝たいのが本音ですが、これも我慢です。ゾーイ、ウーゴそれぞれの気持ちをしっかりと気持ちを受け止めます。みんながその時々で最良と思える選択をして、折り合いをつけていくことができるよう、二人はもちろんのこと、パパもママも見守ったり遊んであげたりして、頑張りました。

それから三年余り、心の中でガッツポーズをしてしまうほど仲のいい姿を見られた日や、ウーゴの「かまって攻撃」や「ぼくがぼくが攻撃」に耐えられずにゾーイが反撃したり逃げたりする日、それぞれが自由に過ごす日など、時間を重ねていきました。すっかり仲良くなった今では、ゾーイも負けてばかりはいません。飛びかかられても時々やり返しています。はじめはけんかだったものが、今では「プロレス遊び」になっています。ノルウェージャンフォレストキャットの遊び方なんだとか。

獣医さんで嫌いな耳掃除をされたウーゴが、帰ってからゾーイに泣きついて、ゾーイが慰めてあげることだってあります。そうしてゾーイに一目置くようになったウーゴが子分のように付き従い、ゾーイのまね(たいてい悪いこと)をするようにもなりました。二人で結託してイタズラもするし、つかず離れずの距離で眠ったり、パパやママに甘える順番を時には譲ったりと、二人の息が合ってきました。

面白いことに、今では追いかけっこ遊びは順番に追いかけ役をしているのですが、追いかけ役になるとどちらも「オラオラオラ~!」とでもいう感じで全力で走り、逃げる方は目をまん丸にして必死の形相で逃げる、というのを順番に繰り返しています。二人とも、密かに、小さい頃の恨みでも晴らしているのでしょうか(笑)。

我が家の「多頭飼い問題」はこのように一件落着しました。振り返ってみて一番よかったのは、猫のルールを尊重すること、先住猫を守ること、二人に愛情をたっぷり注ぐけれど、二人の問題に人間が関わりすぎないことだったと思います。時間はかかりましたが、こうして困難を乗り越えて、本当の「4人家族」になれました。多頭飼いをしていて同じような悩みを持っている方々に、このお話が役に立つのなら幸いです。