猫の絵本特集①~町田尚子

こんにちは、ママです。ママは絵本が好きです。欲しい絵本を全部買うとお財布が厳しくなるので、小さい頃に読んだ本や大人になってから出会った本の中で、手元に置いておきたいものを買うようにしています。絵本は子どものもの、などと侮るなかれ、心がほわーんとあったかくなるものもあれば、切なくて心の深いところをわしづかみにされる本もあって、どれも愛情に満ちていて、奥が深いんですよね。もちろん、ママの手持ちの絵本の中には、猫が出てくる本もあります。

前回紹介したおぷうのきょうだいさんの「俺、つしま」の中で、「やさぐれ会」という地域猫会について少し書きました。猫の集会がらみと言ってはなんですが、次に紹介するのにちょうどいい絵本があるんです。そんなわけで、今回は町田尚子さんの絵本を3冊紹介します。小さなお子さんがいる方はもちろん、猫好きな大人の方にもぜひ紹介したい本ばかりです。

ネコヅメの夜

このお話は、「おや?」と薄目を開けた猫の絵から始まります。ページをめくると、「あれ?」。猫がお手入れを中断して、何か考えています。何だろう?どうしたの?猫って、こういうことありますよね。我が家のゾーイとウーゴも、お食事を中断して階段の上を凝視することがあります。時々ただならぬ雰囲気をまとっていて、何かいるの(オバケとか)?とママはちょっと怖くなります。

この猫の住んでいる家は、ちょっと昔の日本家屋。舞台は夜中。暗くて、時々何もないのにミシッと言う家、いかにもどこかに何かいそうな感じです。そんなところで何に気付いたのでしょう?猫も家と猫それぞれが醸し出すミステリアスな感じ、とても引き込まれます。

ページをめくっても、「もしかして・・・」。何に気づいたのか、まだ分かりません。ママはヒントが欲しくていろいろ探します。本の帯には、「まちがいない。こんやだ。」としかありません。そのうち、町中の猫がぞろぞろ集まってきて、広場に集合します。「ついにこの日が来ましたね」なんて話している猫もいます。猫たちが待ちに待っていたものは・・・。

待ちに待っていたものは、人間もよく知っているものでした。猫って、人間が時に当たり前として片付けてしまうようなことでも、こんなに心待ちにしているんだな、とうらやましくなります。やっぱり、心のゆとりって、大切なんだな。ママも、最近周りの美しいものに気づけていなかったと反省しました。でもきっと、作者の町田尚子さんは、「反省するよりも猫たちに共感して」と言ってくれている気がします。気づいて、集まって、愛でて、帰る。たったこれだけの中に、高まっていく猫たちの期待と、待っていたものが現れたときのクライマックスが込められています。

「俺、つしま」の記事で、猫の集会は「何のために集まっているのか分からなかったけれど神秘的だった」と書きましたが、こんなに素敵なこともしているんですね。ゾーイとウーゴも、ママの近くで、猫たちしか知らない美しいものを見ているのかもしれません。何を見ているのか、今度聞いてみようと思います。

ねこはるすばん

こちらは、「ネコヅメの夜」と同じく、人間が見ていない時の猫の行動を描いた絵本です。でもこの絵本では、シンプルな行動の中に猫たちの心の動きを表現した「ネコヅメの夜」とは違い、お留守番の時間に猫がお外へ出かけ、コーヒーショップへ行ったりヘアーサロンへ行ったりと、忙しく過ごします。

タイトルページから早速、「にんげん、でかけていった。」で始まります。きっと、この時間を待っていたのでしょう。コーヒーショップでは、猫舌なのでコーヒーをフーフーしてから飲みます。ヘアーサロンでは、猫の床屋さんがガシッと頭を両手で固定して、舌でなめて毛をセットします。頭を固定されながらも上目遣いで鏡を見ようとする猫の表情に、プッと吹き出してしまいます。他にもいろいろなお店に行って「きょうというひをまんきつ」します。もちろん、人間が帰ってくる前に帰宅して、黒目をキラキラさせてずっと待っていたかのようなふりをして、お出迎えするんです。

それぞれのお店で見せる猫の反応が秀逸です。考えてみれば猫そのものの行動やしぐさだと分かるのですが、「そう来たか!」と、思わず膝を打ってしまいます。このあたりのユーモアは、「人生はニャンとかなる!」と少し通じるものがあるように思います。ゾーイとウーゴも、パパとママがお出かけしたら二人でこんな風に時間を過ごしているのかしら。もしそうだったら、ぜひ気付かれないように尾行してみたいものです。

ちなみに、「ねこはるすばん」は、特設サイトがあります。町田さんのインタビューが載っていて、描いた時のいきさつが紹介されています。よく見なければ分からない絵の秘密も紹介されていて、「ねこはるすばん」をもっと身近に感じられます。こちらもぜひどうぞ!

ねことねこ

最後は「ねことねこ」です。これは、ぜひ、小さいお子さんと一緒に読んでもらいたい本です。「ねこ と ねこ、おなじところ どこだ?」と問いかけながら、いろいろな二匹を比べていきます。目の色が同じ、尻尾が同じ、違うように見える猫でも、探すとどこか必ず共通点があります。

ゾーイとウーゴは、最近は少し違ってきたけれど、目の色が同じヘーゼル。他にも、毛の色が白・薄いグレー・薄い茶色の三色、立派な耳毛、毛繕いが好きなところ、・・・。あれ?同じところって、意外と探すのが難しい。二人同じところがあったら楽しいのに。

長毛種、短毛種のゾーイとウーゴは、一目見ると違いばかりが目立ちます。肉球の色、耳の大きさや形、お鼻の色、爪の形、みんな違います。同じところを見つけるには、二人をよーく見ないといけないんですね。でも、そうやってよーく見て二人に向き合っていると、同じところが見つかって楽しくなるだけでなく、気付かなかった特徴にも気付いたりして、二人のことをどんどん好きになっていきます。また、向き合っていると、二人もママに対して向き合ってくれているのが分かります。それって、とっても楽しい!

絵本は続きます。そっくりに見える猫は、親子かな?どこも全部同じです。最後には、「ねこ と ねこ と ねこ と・・・」たくさんの猫が出てきて、みんなが同じところを探します。みんなが同じところ、見つからないよ~。でもご心配なく。最後はとても素敵な言葉で締めくくられているんです。

町田尚子さんの描く猫の絵は、毛がとってもふっくらしていて、丸いお顔にプクッとしたヒゲの付け根があって、目が輝いています。この絵を見ていると、ママは心が安らぎます。どの猫も決して美男美女ではないし、ハチワレ柄の子も、左右対称ではない「ヘンな柄」に描かれているけれど、それぞれの子にしかない、たまらないかわいさがあります。それに、どの本もストーリーがほのぼのしていて、読んでいると、リラックスできるんです。ぜひ、手に取ってみてください。

書籍情報

ネコヅメの夜 WAVE出版 2016年

ねこはるすばん ほるぷ出版 2020年

ねことねこ こぐま社 2019年