いい猫もいるよ!①~絵本「白猫」の紹介

こんにちは、ママです。前回の「猫ってこんなワルじゃないもん!~映画『キャッツ&ドッグス』の紹介」の記事で、映画「キャッツ&ドッグス」と続編「キャッツ&ドッグス 地球最大の肉球大戦争」を紹介しました。この映画では、猫が悪者(続編ではいい猫もいる)の設定なのですが、お鼻にしわなんか寄せちゃって、本当にワルそうに描かれています。

猫好きのママとしては「こんなワルじゃないもん!」と不満に思うところもあるものの、明るくテンポよくストーリーが進むので、素直に「アハハ!」と笑っちゃいます。でも、そうではなく、「この映画いや~!」と思ってしまう猫好きさんがいるのもよく分かります。

そこで今回は、猫がとてもいい人(猫)で、美しくて、高貴な雰囲気をまとって描かれている絵本「白猫」(エロール・ル・カイン、ほるぷ出版)を紹介します。「ほら、猫ってやっぱりいいんだもん!」と思ってもらえたら、幸いです。

主人公は、ちょっと「和」な感じもする顔立ちの、グリーンの瞳の白い長毛の猫です。華やかでふわっとした素敵なドレスに、長いベールが垂らされた帽子をかぶっています。手には扇子、口角が上がっていて穏やかな微笑を蓄えたこの白猫は、「キャッツ&ドッグス」に出てきたワル猫とは大違い、とても頼れる感じのする「お姉さま」に見えます。あ、でも、ママは「キャッツ&ドッグス」に出てくる、悪の権化なのにどこか憎めないキャラの「ワル猫」ちゃんたちも好きですよ。

さて、その昔、ある国の王様が「この世でいちばんかしこい犬を連れてきたものを、つぎの王にしよう」と3人の王子に言います。王様は、王位を退いた後のなぐさめに、犬一匹飼いたいたいのだそうです。3人の王子はそれぞれに、世界一かしこい犬を探しに行きます。上の王子とつぎの王子は、「かしこい犬」をたくさん集めます。

そんな中、末の王子は「まほうの森こそ、とくべつにかしこい犬をさがすにはぴったりだろう」と、森へ入っていきます。森の中にはなんと、猫の形をしたお城があって、女あるじ―白猫―が出迎えます。白猫は王子をあたたかくむかえいれ、どうかいつまでもここにいてください、と言います。

王子はお城で白猫と楽しい時間を過ごします。王様に命じられたことなんか、すっかり忘れてしまっていたのですが、ふとしたことから思い出します。白猫に打ち明けると、金の卵を託されました。王子が王様の待つお城に帰って金の卵を真っ二つに割ると・・・。

白猫は「ごしんぱいにはおよびません。・・・あなたは、みるべきものをみるでしょう」と言って、末の王子を送り出していました。金の卵は、王子に何を見せたのでしょうか。魔法の森に住んでいる、穏やかな微笑をたたえた美しい白猫。とっても頼りになります。でも、親切の下に悪だくみを隠している「ワル猫」なんかではありません。実はまだ王冠を手放したくなかった王様の次の命令に対しても、末の王子を助けます。

「数打ちゃ当たる」的に、かしこい犬をたくさん集めればいちばんかしこい犬はその中にいるだろう、と思ってしまった心の弱い上の王子や次の王子、それに実はまだ王冠を手放したくなかったという「なんじゃそりゃ」な王様とは違い、白猫は、王様の命令に対してただ一つの答えを出していきます。正々堂々としています。

末の王子は、白猫を訪ねるたびにとても幸せになり、王様の命令の期日ぎりぎりまで白猫のお城で過ごしてしまいます。確かにな、この白猫、ママはついゾーイと重ねてしまうんですけれど、ゾーイと一緒にいると時間を忘れるもんな。それに、白猫のお姫様然としたところ、ゾーイの「ノルウェーの森のお姫様」なイメージにピッタリ。おまけに、ゾーイは素直で素朴な子だから、難問にも真正面から取り組むと思います。いやいや、ゾーイだけじゃなくてウーゴだって、お姫様ではないけれど、「ワル」なところは少しもないから、きっと一生懸命解決しようとするに違いありません。

訳者あとがきによると、この絵本は、17世紀にフランスの女流作家が書いたおとぎ話を、作者カインが再話し、絵もカインによって描かれているということです。フランスの宮廷で「優雅な暇つぶし」として作られたこのお話にピッタリなカインの絵は、「優雅」という言葉が似合います。白猫の「和」な顔立ちも、絵全体の優雅さにスパイスをきかせています。こんな風に描かれている猫が「ワル猫」だとしたら・・・。「ワルさ」が倍増されるかもしれません(笑)。

絵の持つ雰囲気を裏切らないストーリー、というか、ストーリーの持つ神秘性を存分に表現した絵と、猫が本来持つ優雅さが絶妙にマッチしているこの絵本は、「たかが絵本」と侮るなかれ、大人でも十分楽しめます。ぜひ小さい子と一緒に読んでみたいし、ずっと手元に置いておきたい一冊です。

このお話は、ハッピーエンドです。「キャッツ&ドッグス」に不満を持つ猫飼いさん、猫好きさんにも、白猫を信じてこの絵本を読んで本当に良かったと思ってもらえると思います。ぜひ!

書籍情報

白猫 エロール・カイン ほるぷ出版 2003年