こんにちは、ママです。今朝、大失敗してしまいました(泣)。インターネットで、トラの赤ちゃんの泣き声はダミ声だよ、という記事を読んだんです。ちょっと寝ぼけていたママは、いきなりその動画を再生してしまいました。トラの赤ちゃんは、「にゃ~お」のすべてに濁点をつけたような声で、ママもびっくりしたのですが、ゾーイとウーゴが瞬時に警戒態勢に。
普段穏やかなゾーイはくつろいでいた押し入れから飛び出してきて、部屋を二歩くらいで移動して階段へ。ウーゴもハンモックから耳を寝かせて降りてきました。二人とも家中をぐるぐると逃げ惑い、その様子にママは呆然としてしまいました。
そ、そうだ、動画止めなきゃ。ママは慌てて動画を止め、ゾーイとウーゴをなだめます。でも、二人はママの声も耳に入らず、家中をぐるぐる回っています。そうだよね。二人にとって、このお家は絶対的な安全地帯。そんなところで、赤ちゃんとはいえトラの鳴き声がしたら、怖いよね。不安だよね。ごめん、ママが悪かった。ママがあわてたら二人が余計に怖いと思い、なだめるのをやめて、じっと待ちました。二人はしばらく逃げ惑っていましたが、1時間くらいで元の居心地のいい場所へ戻り、くつろぎ始めました。ママはシュン・・・。本当にごめんね。
今回は、「なぜ、猫はあなたを見ると仰向けに転がるのか?」の紹介です。前回、「猫のこと、どれだけ知ってる?~『猫に超能力はあるか』の紹介」の記事をアップしましたが、今回紹介する本は、実は同じ著者デズモンド・モリスによってその前に出版された本です。「猫に超能力はあるか」のタイトルに魅かれて先に読み進めてしまったので、記事の順番が前後していますが、どちらもとても面白い本です。
モリスは言います。
「ネコは矛盾にみちた生きものだ。これほど人間と親しい関係にありながら、これほど勝手な行動をとりたがり、実際そうしている動物は他にはない。」
「ネコは二重生活を送っている。家の中では飼い主をじっと見上げる育ちすぎた子ネコである。が、ひとたび表に出ると、完全な大人であり、一城の主であり、自由生活をする野生の生き物である。」
「ネコはバイメンタル、すなわち精神的二面性を持っている。肉体的にはネコであるが、精神的にはネコであり人間なのだ。」
ゾーイもウーゴも勝手とは言わないけれど、至極気ままに暮らしています。二人とも完全室内飼いなので、二重生活を送ったりはしませんが、パパやママに対するときと、猫同士の時には、お作法が違うのかもしれないな。それにしても「バイメンタル」というのは面白いですね。その通り!
にしても、モリスはどうしてこう思うに至ったのか、とても気になります。前回の記事でも触れましたが、モリスは動物学者。ママよりももっと「動物の視点」を理解しています。この本では、「なぜ、のどを鳴らすのか」「なぜ、糞を埋めるのか」「どれほど社交的か」「なぜ、暗闇で目が光るのか」などといった、猫の行動や体の特徴に絡む質問がたくさん載っています。それらを、著者が動物行動学の観点から解説を加えていきます。
「なぜ、のどを鳴らすのか」については、ほかの本でもよく紹介されている通り、「満足しているから」「病気などで苦しいから」といった答えが用意されています。でも、この本は動物行動学の本。ほかにも、猫とは違ってライオンやトラなどの大型猫類はちゃんとのどが鳴らせない、との情報が。なになに?ライオンやトラは、息を吐くときだけしかゴロゴロいわないけれど、猫など小型ネコ類は息を吸うときにもゴロゴロいうんだそう。
へぇ~。確かに、ゾーイとウーゴがゴロゴロいうとき、途切れないのはなぜだろうと思っていました。口を閉じていてもゴロゴロいいながら息ができるのか。器用だな。では、それができない大型ネコ類は小型ネコ類よりも劣っているの?モリスは言います。「ライオンやトラは、それを埋め合わせる別の特技を持っている―彼らは吠えることができるのだ。」そうか~。吠えることとは結び付かなかった。今朝の光景がよみがえり、ママの胸をきゅんと痛めます。
では、「なぜ、糞を埋めるのか」。糞を埋めるのは、自分のにおいのディスプレー効果を弱めるためだということと、地位の低い猫は埋めるけれど強い猫はしないことは、よく言われています。でも、モリスは言います。「もちろん、糞を埋めることによってにおいの信号が完全にとだえることなく、・・・こうすれば、ネコは深刻な脅しにならぬ程度ににおいで自分の存在を主張しつづけることができるのだ。」なるほど。「猫の糞はクサイから何をしてもにおいが消えない」のではなく、「あえてクサイにおいを利用する」戦略なのか。
ゾーイはウンチを隠しません。ウーゴは隠します。ママは前から、もしかしたらこれは、ゾーイ対ウーゴの関係性ではなく、猫対人間の問題なのではないかとニラんでいました。こうして考えると、ゾーイは、パパやママと比較的対等だと思っているから、嫌なことは嫌だというし、ウンチを隠さない。ウーゴは反対に、パパとママより自分は下にいると認識しているからすごく甘えてくるし、ウンチをバカ丁寧に隠す。でも、お互いがお互いよりも強いと思っている(でも、遊びの時はお互いがやりつやられつしている)。ということなのでしょうか。
自分のウンチで存在を主張し続けているというのは、面白いと思います。自分から距離が離れた物体であれば、襲われる危険は少ないし、存在を主張できるし、便利なのでしょう。ママにしてみれば、埋めてもにおいがするのは、二人にとって「早くトイレをきれいにしてもらう」以外の利点があるようにも思えませんが、きっと二人それぞれ、人間にはわからない心の機微があるのかもしれません。
「ひげを何に使うか」にも、とても面白い考察が加えられています。猫のひげは隙間を通ることができるかなどを測る触覚だと言われていますが、命に関わるほど大切なものなんだそうです。なぜなら、完全なひげを持った猫は昼も夜も狩りができるけれど、ひげに損傷のある猫は視覚が使える昼間しか獲物を殺せないから。なるほど~。確かに、ひげに損傷のある猫が夜に狩りをしたら、一撃必殺ができなくて逆に「窮鼠猫を噛む」なんてこともあるもんな。
ちなみに、ひげと同じような毛は、頬や目の上、前足にあるのをよく見ますが、これは同じはたらきをするもの。それだけではなく、あごにもあるんだそう。あごにあるのは知らなかったなぁ。
読んでいると、猫が本来はとても大変な生活をしていたかがわかります。歴史的に「飼い猫」が出現して、少しは楽な生活になったのかしら?猫が「勝手な行動」をとったり「二重生活」をしていたり「バイメンタル」だったりするのには、いろいろと理由があるんですね。ゾーイとウーゴには、ぜひ我が家での生活を楽しんでもらいたいです。でも二人には、パパやママに内緒の「二重生活」があったりして(笑)。
この本にはほかにも、猫にまつわる英語表現が紹介されています。例えば、「バッグからネコを出す(He let the cat out of the bag.)」とは、なんでしょう?
学校でよく習う表現It is raining cats and dogs.は有名ですよね。これも、そのような表現になったいわれがあるようですが、それは本を読んでみてください。ほかにも、狭苦しいことを「猫を振り回す余地もない(There is no room to swing a cat.)」と言ったり(なんでひどい・・・)、慌てることを「子ネコを生む(Having Kittens)」と言ったりするそうです。それぞれの起源や使い方は、本をどうぞ。
この本も、岩合光昭さんが写真を撮っています。この本で猫のことをたくさん勉強したら、ママもネコ博士になれるかしら?
書籍情報
キャット・ウォッチング 1 なぜ、猫はあなたを見ると仰向けに転がるのか? デズモンド・モリス 平凡社 2009年