こんにちは、ママです。ママは今日、お仕事部屋ではなく居間でお仕事をしています。居間にノートパソコンを持ち込んで、ソファーに足を投げ出して気ままにお仕事。気分転換になります。お仕事部屋でのお仕事の時には、同じようにそばにいてくれるのに、今日はゾーイとウーゴも居間のハンモックでくつろいでいます。どうしてママのいるところにいたがるんだろう?でも、とってもありがたいです。
今回は「ネコの博物図鑑」という本を紹介します。先日、古今東西の猫を芸術作品とともに紹介した「猫の世界史」という本を紹介しましたが、「ネコの博物図鑑」はどちらかというと、猫の解剖学、生理学、生態、社会行動など科学的なアプローチから、猫と人とのかかわりや現代の猫にまつわる問題など、幅広く猫について扱っています。でも、どの項目も一般に猫を飼っている家庭が必要としている知識が網羅されていて、一冊手元に置いておくと安心な本です。
進化学的に見て、猫の祖先がイエネコにたどり着くまでに、進化学的な分岐点が7つほどあるようです。猫は、ユーラシア大陸―北米大陸間の移動の他、北米―南米大陸間の移動、ユーラシア大陸からアフリカ大陸への移動が主だったよう。長い時間をかけて、拡散していったのですね。その頃は、イエネコの祖先が生きていて、ゾーイやウーゴのような猫が移動していたわけではありませんが、猫がポチポチと歩きながら移動していったのかと想像すると、なんだか胸がきゅんとしてきます。
人間と出会ったのは、一万年ほど前、エジプトからメソポタミアにかけて広がる「肥沃な三日月地帯」で、だそうです。狩猟採集の生活から定住したときに、栽培した穀物を荒らすネズミを狩りさせるために一緒に住み始めたのが始まりだというのは、「猫の世界史」の記事でも書いた通り。その後、エジプトで神格化されたり、古代フェニキアやスカンジナビアで船に便乗したり、「エキサイティングな猫生」を送っていたようです。縞模様のパターンは、猫を運んだ航路と一致しているようです。我が家の二人には縞模様はありませんが、これから縞模様の猫を観たら、はるか昔に船旅をしてきた猫なんだなあと、尊敬の念で見ちゃいます。
解剖学と生理学の項目では、骨格や筋肉、皮膚や被毛、臓器や免疫、感覚器官などの一般的説明が載っているのですが、なぜそうなったのか、そうなったことによって何ができるのかに着目して、とても分かりやすく書かれています。また、写真がたくさん載っているのですが、どの写真もきれいでかわいい。ママはつい、写真の猫の愛くるしさや、手の先などの柔らかさに目が行ってしまいます。スケッチや図もわかりやすくて、すんなりと頭に入ってきます。
人とのかかわりについても、十分なページを割いて紹介しています。ママがここで気になったのは、「ネコは飼い主を本当に好きなのか」という小項目です。ドキッ。もし、「猫は飼い主のことは利用するだけ利用しつくして本当はな~んとも思っていない、悪の輩なんです」なんて書かれていたら、どうしよう。でも、心配することありませんでした。猫は、飼い主の声を聞き分けるし、強い愛着を持つ猫もいるんだそう。うんうん、それなら、ママ知ってる。ゾーイもウーゴもパパとママが特別って思っているから。よかった。ほっとしながら、次の項目へ。
「現代のネコ」の章には、飼い猫の避妊・去勢のメリットや多頭飼いのはじめ方、猫との遊び方、問題行動の種類と解決策など、飼い主さんにとって役立つ情報が載っています。話には聞いていたけれどちょっと驚いたのが、猫にも認知症があるということ。人間のアルツハイマー病に似た疾患で、方向感覚や睡眠パターンが乱れたり、夜泣きをしたり怒りっぽくなったりするんだそうです。残念ながら治療方法はないそうですが、環境を整えてあげたり精神的に刺激をしてあげるなど、進行を遅らせるために飼い主ができることがあるそうです。
猫の認知症についての情報は、ほかの本ではあまり見たことがないので、とても助かります。実際にゾーイやウーゴが高齢で認知症になってしまったら、この本に書いてある以外の症状が出てくるのかもしれませんが、少なくとも飼い主がしてあげられることがあることだけはわかります。信頼できる獣医さんと一緒に、そういったことにも対応しよう、という心構えができました。
この本は、飼い猫以外の猫たちにもまなざしを向けています。最近身の回りでもよく聞くようになったTNR(Trap-Neuer-Return)と呼ばれる野良猫の去勢・避妊活動や猫の保護施設の役割についてもページを割いています。人間は古来から、獲物が豊富にいる場所に、猫という「熟練ハンター」を放ってきています。その結果、人間に捨てられた猫もいるけれど生粋の「野ネコ」もいます。そうしたことにどのように現代の私たちが向き合っていくのか、いまだ答えのない問いを突き付けています。
はるか昔を旅して人間の家と心に入り込んだ猫。そこから何世代も経て今ここにいるゾーイとウーゴ。かわいい二人はぬいぐるみなんかではなく、二人の体の中には、しっかりとした骨格としなやかな筋肉、精密な臓器とそれらすべてをつかさどる脳があって、絶妙なバランスを作り出して「生命」となっています。
そんな二人が、パパやママに向かってかわいい声で鳴いたり、丸い手でパパやママの注意を惹きます。頭を撫でてあげたらうっとりして目を閉じるし、遊びの時間には間合いをしっかりを見計らってボールをジャンピングキャッチします。こんなかわいい子たちが、こんなかわいいことをする子たちが、生身の存在としてパパとママのそばにいてくれるなんて、それは本当に「奇跡」としか言いようがありません。この本を読んでいると、「綿」ではない身体と「お味噌」が詰まっているわけではない脳に、感謝の気持ちでいっぱいになります。
著者は、「猫は人間と同居するようになって以来、猫特有のシグナルを人間が理解できるように適応させてきたが、人間は猫ほど努力していない」と言います。でも、猫って、人間のこと、よくわかっているんですよね。本当に、どこを見ているんだろう、といつも不思議になります。猫がそうして努力してくれているのに、人間の行ってきた猫の社会的欲求に関しての研究知見は、十分に実用化されていない、と著者は指摘します。
今度は、人間の番なのかもしれません。人間が、ライフスタイルを猫と同居するように適応させれば、ママもゾーイとウーゴにストレスのない生活を送らせてあげることができるし、二人のことがもっとよくわかってもっと仲良くできるようになるかもしれません。飼い猫以外の猫たちだって、人間の工夫で今よりも幸せな生活が送れるようになるかもしれません。
今よりももっと充実した猫ライフが送れるなんて、そんなことあってもいいのかしら?何をどうやったらいいんだろう?この本を読んで、まずは猫のことをもっとよく知ることから始めよう。
書籍情報
ネコの博物図鑑 サラ・ブラウン 原書房 2020年