全国の小学生、頑張れ!~「ねことバイオリン」の紹介

こんにちは、ママです。今回は児童向けのお話「ねことバイオリン」の紹介です。アメリカの童話作家タマラ・キットの作品で、原題を「少年と猫とバイオリン」と言います。日本語版は、大日本図書の「ゆかいな ゆかいな おはなし」シリーズとして1980年に出されています。このシリーズは、「ユーモアいっぱいで、家族や友人への愛情にあふれ、子どもの想像をどこまでも広げる作品を集めている」のだそうです。子どものみずみずしい感性で、どんな想像が膨らむのかしら?

小学校1・2年生向けに設定されていて、ほとんど漢字を使わずに書かれています。表表紙の裏には、「ひとりで よみましょう」。子どもが、習いたての漢字を思い出しながら一文字ずつ追って読んでいく姿を想像すると、「頑張れ!」って思います。

昔、小さい子にとある工作を教えたことがありました。おばあちゃんに連れられた女の子。まだはさみを思うように使えない年齢の子でした。未熟だったママは思わず手伝おうと手を出したのですが、その子は自分でやる、とばかりに工作を渡してくれませんでした。そこでママは、安全だけは注意して、あとは手順を教えながらその子の思うようにやらせてあげることにしました。

画用紙を線のとおりに折れず、はさみで切った後はぐちゃぐちゃで、完成した作品は初めママが思ったようには動かなかったのですが、その子はとても誇らしげで、そばで見ていたおばあちゃんも嬉しそうでした。ママは、完成品がどうであっても自分でやりとおすことって、こんなに大切なんだ、と気づかされました。その子の笑顔を見て、とてもうれしかったです。また、ママの心の動きがわかっていたのか、おばあちゃんの「ありがとう」という言葉にもいろいろな意味が込められているのがわかり、ママの方こそ感謝の気持ちでいっぱいになりました。

そんなママは、「ひとりで よみましょう」と書いてあるのを見た時、一人で本と格闘している全国の小学生に、心からのエールを送りたくなったんです。

さて、お話はとても簡単。貧乏なきこりのおじいさんと男の子が暮らしていました。おじいさんは遠くへ行くため、男の子とお別れをしなければならなくなりました。連れて行ってあげられない男の子に、おじいさんは三つのものを残します。古いおの、おんぼろのバイオリン、そして片目の猫。「それで きっと おまえさんの うんが ひらけるだろう。」と言って、一人でどこかへ行ってしまいます。

役に立ちそうもない三つのものを残されて困った男の子は、自分も出ていこうとします。すると片目の猫が「あんたは まだ、 なんにも しりませんからね。」と言って、一緒に来てくれることに。淡々とした中に、猫の温かい愛情があふれます。子どもは、守るべき存在。作者のスタンスと、「ゆかいな ゆかいな おはなし」シリーズの姿勢が重なります。子どもは、守って、いつくしんで、見守る存在。

男の子は、行く先々で困難に出会います。そのたびに、片目の猫がおんぼろのバイオリンを使って解決してくれます。二人で力を合わせて困難に打ち勝つことだってあります。そんなことを繰り返すうち、二人は「もう、きっても きれない ともだち」になります。

毎年お正月にはパパの実家に新年のご挨拶に行くのですが、ゾーイとウーゴはお留守番です。一泊させていただく時は正味24時間の不在になるので、ペットシッターさんに2回来てもらい、ごはんのお世話やトイレの掃除をお願いし、用意したおもちゃで遊んでもらいます。出かける時にママは「二人で力を合わせて、この難局を乗り切ってください」と出発のご挨拶をします。帰ったらすぐに「ちゅ~る」のごほうびをあげ、二人が満足するまで頭を撫でてあげます。ママも不在中は二人が恋しくて早く帰りたいので、家に着いたら感動の再会が繰り広げられます。

不在中、二人は力を合わせて難局を乗り切っているのかしら?こうした経験を通して、二人は「きっても きれない」きょうだいになっているのかしら?二人で力を合わせるのが年1回だけだから、家でのお留守番は耐えられるからなのか、お留守番を通して絆が強くなったかどうかは分かりません。そもそも、普段の二人を見ていても、それほどくっついているわけではありません。追いかけっこでウーゴが興奮しすぎたりしつこくかまいすぎてゾーイを怒らせることもあります。

でも、最近は二人連れ立ってどこかへ行ってしまうこともあります。夕飯後そろって姿が見えないので探してみると、暗い寝室でそれぞれ思い思いにくつろいでいるんです。ごはんが食べたくなると、連れ立って居間にやってきます。食べたらまた、二人そろって寝室へ。くっついているわけではないけれど、一緒に行動するんです。ウーゴのために作ったベッドをゾーイが貸してもらっていることもあります。でも、みんなで寝るときはそのベッドはウーゴのもの。話し合いがついているようです。

以前、家ではなくペットホテルでお留守番をしてもらった時、大きなお部屋に二人一緒に入れてもらったのですが、じっと耐えているゾーイのそばで、トイレをひっくり返してその下に隠れてしまったウーゴ。家から持ってきたごはんを食べているゾーイの様子を見てホッとしたのか、ウーゴもごはんを食べて、ペットホテルの人を安心させたこともありました。ホテルだと二人に負担がかかってしまうのがわかったので、その後はホテルではなく、自宅でペットシッターさんにお願いするようになったのですが、あの時の経験は、本当に二人にとって「難局」だったと思います。

今の二人のあり方は、ウーゴが来た当初二人それぞれなじむのに苦労していたころに比べれば、大きな進歩。きっとこれまでに大きな難局と小さな難局がたくさんあって、そのたびに二人は力を合わせてきたんだと思います。だから、きっと、「きっても きれない」きょうだい。

家の前は交通量のある道路なのですが、突然大きなエンジンの音や人の話し声がすると、二人で警戒態勢に入ります。今の時期、庭の椿の木にメジロやヒヨドリが来ると、二人そろって狩りをしようとします。お留守番もそうですが、きっとこんな日常のことでも、二人は力を合わせているんだと思います。だから、やっぱり、「きっても きれない」きょうだい。

それにしても、この「ねことバイオリン」、どうして「猫」なんでしょうね?もし、これが犬だったら・・・?「ねえねえご主人様、どうしましょう?」って人間を頼る小型犬もいたり、「もしもの時はこのお酒を・・・。」なんていう山岳救助犬もいたり、「狩りをしますから、指示してくださいな。」なんていう猟犬もいたり、イメージが定まらないかもしれませんね。猫はその点描きやすいのかも。

この本を読む小学生は、どんな想像を膨らめるのでしょう。68ページもあるこの「大作」を、一人で読みきれるかしら?ママはこの本を読んで、想像というよりも、この記事に書いたようにたくさんのことを思い出しました。女の子の工作に対する姿勢に心がほっこりしたりゾーイとウーゴの成長に喜びを感じたり、いろいろな愛情にあふれる時間を持つことができたと思います。小さいお子さんがいる方、猫を飼っている方、ぜひ手に取ってみては?

書籍情報

猫とバイオリン タマラ・キット 大日本図書 1980年