猫には秘密の世界がある?~「密着! ネコの一週間」の紹介

「どうして猫が好きかって?それは、自由でこびないのにかわいいところでしょうか。」

「一緒に遊べるし、触ると気持ちいい。ふわふわしてるんだ。」

「この子が出かけるとさびしいですが、無事に帰ってくるとホッとします。」

「抱っこしているととても落ち着くの。ほら、なで心地、よさそうでしょ?」

こんにちは、ママです。猫って、目が真ん丸で、毛むくじゃらで、手がクリームパンみたいで、おひげの付け根がぷくっとしていて、愛くるしいことこの上ないと思います。でも、自分の意思はちゃんと持っていて、抱っこは苦手とか、今は一人でいたいとか、今この瞬間にナデナデしてとか、そういうナデ方じゃないとか、愛くるしいくせに注文が多いですよね。でも、そんなところは、ママは猫愛がマックスになって身悶えてしまうところです。

冒頭の発言をした4人の猫飼いさんたちも、きっと、そんな猫ちゃんたちに翻弄されている人たちなのではないかと思います。というわけで、今回は、ドキュメンタリー「密着!ネコの一週間」の紹介です。

これは、イギリスのBBC放送が制作した、猫の行動学に関する科学番組です。猫には二重生活があるとか秘密の世界があるとかということがよく言われますが、「本当に秘密の世界があるのか」、「猫はそこで何をしているのか」を、技術を駆使して明らかにしてみよう、という壮大なテーマの研究プロジェクトをまとめたものです。科学番組と言っても堅苦しいものではなく、研究ってこんなにワクワクして楽しいものなんだ、ということが伝わってきます。

このプロジェクトでは、生物学者、生命学者からなる研究チームが、一週間にわたり、50匹の猫に24時間密着しました。サンプルとして選ばれたのは、サリー州シャムリー・グリーンという村に住む、年齢や大きさ、種類がバラバラの50匹の猫。平均年齢は15歳、平均体重4キロの猫たちが集められました。この村は、イギリスの中でも、飼い猫の多い地域なのだそうです。

選ばれた猫を見ると、なかなかどうして、堂々たる風格の子が多いです。15歳と言ったらお年寄りだけれど、まだまだ元気いっぱいだし、体つきを見ても、平均体重4キロには見えません。外猫なので、体が鍛えられているのでしょうか。

選ばれた猫たちには、小型カメラとGPSのついた首輪をつけて普段通りに生活をしてもらいます。首輪をつけてもちゃんとごはんが食べられるか、どこかに引っかかったら簡単に外れるかなど、首輪の「安全確認」をして、猫ちゃんたちに着けていきます。飼い主さんたちにも、生活リズムを変えたり、猫用ドアを作ったり、外に出さなかったりと特別なことはしないようにという注意があります。

GPSによって計測された猫の移動時間や移動速度、経路を、地図上に落としていきます。脇目も振らずにまっすぐ歩いている猫は、地図上の線も直線、フラフラとあっちのにおいをかぎ、こっちのにおいをかぎながら歩いている子は、ガタガタの線。かなりの精度です。線を見ただけで、ママは胸キュンです♡みんな、みんな用事がたくさんあって、忙しくしているんだね。

猫の生活スタイルは、人間と暮らすことで次第に変化しつつあると言われています。でも、外でどのように過ごしているのか、詳しくは分かっていません。同じエリアの中で猫たちはどのように共存しているのでしょうか。また、ペットとして飼われている猫には、動物としての本能が残っているのでしょうか。

ワクワクしますね!我が家のゾーイとウーゴは完全室内飼いなので、この猫ちゃんたちに代わりにやってもらっている気分です。借りた建物の入り口には、“CAT HQ(ヘッドクオーター)”との大きな張り紙。カッコイイ。この研究への誇りが垣間見えます。

建物には大きな機械が運び込まれ、いろいろな形のグラフが画面に浮き上がります。何を表しているんだろう?また、衛星写真の地図にデータを落としていって、猫ちゃんたちの足取りを可視化します。歩いた速度もわかります。猫ちゃんたちの情報もインプットし、足取りが何ていう名前のどんな子のものかがわかるようになっています。

ブルータスは家のそばを歩き回っています。モリーは近くの森へ。ジンジャーは近所の家へ。

雄猫スーティーは広い範囲を歩き回っています。その広さ3万平方メートル、なんとサッカーコート4面分も歩いているとのこと。人間でいうと、どのくらいの広さなんだろう?

調査の結果、平均行動範囲は、オスは家から100m、メスはその半分だったそうです。他にも、住宅地の猫よりも郊外の猫の方が長距離移動だったり、行動パターンも遠くへ行って帰ってくる、近くを歩き回っている、何度も外に出るなど、いろいろあったそうです。

研究グループによれば、これは、縄張りの存在を確認しながら決めているのではないかということ。ということで、次は縄張りについてカメラの情報の解析をしました。このカメラは、猫の目線で撮影し、リアルタイムで確認できるスグレモノ。でも、ちょっと大きくて、動きづらそう。猫ちゃんたち、ちょっと我慢してね。

カメラの映像は、ママの想像を超えていました。そっか~、そう見えているのか~。地面が近いんだね。飼い主さんを見上げているのが、カワイイ。ゾーイとウーゴも、こんな風にパパとママを見上げてくれているのかしら?人間って、とっても大きく、そびえたつように見えているんだね。パパもママも二人の頭の上に手を近づけないようにいつも気を付けているけれど、これはなるほど、気を付けなくちゃいけないな、と思いました。きっと、大きな隕石が降ってきているように感じているんだな。いい気付きを与えてくれて、ありがとう。

ジンジャーは、飼い主さんによると、お隣に行って鶏を脅かしたり昼寝しているくらいじゃないかと思されているようです。足も濡れてないし、夜は出歩いていないのでは?雨や雪、寒いところが好きではないし、夏には庭で日向ぼっこしているジンジャー、縄張りなんてないのでは?

しっかりとした足取り(直線)で近所の家の庭に向かっているジンジャー。裏庭を歩き回り、広場を抜け、12分後に目的地到着。そこには別の猫が。

「ウ~ニャ~」「シ~ッ」、威嚇の音。でも、それだけ。どうやら、相手が向かってきたので、距離を取ろうとして走り出したようです。一般に猫は、実際に戦闘に入ることはめったにないと言います。生き延びられるよう、けがのリスクを回避しているんです。昔、野生だった時代からそうしているんだと思います。でも、狭い村、研究に参加しただけでも50匹はいる猫・・・、縄張りって、重ならないのかしら?重なったら、どうなるの?どうして、戦闘しないまま共存できているの?

誰がどこまで縄張りとするのか、縄張りと「スリスリ」の意外な関係、ゾーイとウーゴのように連れ立って行動する猫の関係性など、GPSとカメラのデータは、人間が知らなかったいろいろな猫の行動を明らかにします。データに対する論理的な、でも難しくない解釈が、いろんな疑問を解き明かしていきます。

また、昨今のペットフードの質(栄養価)や味がよくなったことで、猫はある「進化」を遂げているそう。以前「猫ってどんな子?~『猫の世界史』の紹介」の記事で、犬と違って猫は人間に飼われるようになってもやることは同じ、ネズミ取りだと書きました。今も猫は「二通りの方法」で狩りをしているそうです。それも、GPSのデータが裏付けます。一つは、野生動物と同じ行動をしていることがわかりました。GPSからどうしてそれが分かるのかしら?もう一つは、ちょっと意外な方法。どの猫が、どこで、何をしているのでしょうか?ぜひ、番組を見てみてください。

このような研究は、首輪をつける以外は猫ちゃんも飼い主さんもいつもと同じように暮らせばよく、まさにいつもと同じ行動について調べたい研究者のニーズとマッチしています。こういう研究って、とても価値があると思います。カメラは猫の体に比べてずいぶん大きく、ちょっと大変そうだったけれど、今の技術で同じ研究をしたら、もっと猫の体に負担なくできるのではないかと思います。また、素人のママが一般的に持っている猫の知識とその解釈が、頭の中でとても簡単に結び付いて、猫について楽しく学ぶことができました。解説って、本当に大切なんですね。

猫ちゃんたち、お疲れ様でした。秘密の世界を見せてくれて、ありがとう。

番組情報

密着!ネコの一週間 ヘレン・セイジ監督 BBC 2013年

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